独立マンション管理士には、準備期間が必要です

「永住居住者のためのコミュニティーづくり」、前頁では、決してカンタンではありませんが、実現可能な理想論をお話ししました。
しかし、将来的な希望観測ばかりを話しているわけにはいきません。重要なのは資格取得の後に、マンション管理士としてどうやって食べていくか?足元の問題を解決するのが先決です。

2001年の試験開始から2008年度まで、マンション管理士試験の合格者トータルは全国で約2万人。そのうちで実務行うことのできる登録者数は約1万5000人です。
この先は詳しいデータを揃えられなくて残念ですが、現状では、有償(マンション管理組合から報酬を貰って)で業務を行っているマンション管理士はまだごく一握りのようです。
一例ですが、神奈川県のマンション管理士会が行ったアンケート調査では、マンション管理士の有償業務のみで仕事が成り立っているのは全会員の4%。マンション管理士として生計を立てるよう準備中の会員が43%というデータが出ています。この結果を見ますと、今の時点では、マンション管理士の仕事だけで食べていくのはむずかしいというのが事実のようです。

しかしあと5年もすると(2009年現在)、いまはまだ潜在的なニーズが顕在化してくることはまちがいありません。全国に500万戸以上の区分所有者(マンションオーナー)が存在するのは紛れもない事実ですし、その頃には築30年を超える集合住宅が続出してきます。マンション管理士等に頼らざるを得ない事態が発生する事実は誰にも否定できないのです。

独立を目指す方が焦らずそのタイミングに備えるために、資格取得を目指しつつ、マンション管理会社など関連業種に職をみつけ実務を積むのが賢明ではないでしょうか。
と言いますのも、マンション管理士は、税理士や司法書士などの国家資格のように「独占業務」があるわけではないからです。マンション管理士は、中小企業診断士などと同じ「名称独占資格」です。将来的なニーズは非常に高いのですが、そこはあくまで実力の世界です。経験がモノを言う、数々のノウハウが欠かせない世界なのです。

これはどんな国家資格にも共通していることですが、試験をパスした知識のみで生業が成り立つ資格はありません。弁護士業や税理士業務を営む上でも、営業努力なしに開業は成功しません。資格は持っていても、建物の保全・修繕の実務経験のないマンション管理士には(自分で工事作業をするという意味ではありません)、さらに営業努力以上のことが必要になります。

顧問を担当するマンションの劣化の状況を見て、どのような工事が必要か、また工事にはどのような種類があるのか、それに掛るコストはどれくらいか…?マンション管理組合のアドバイザーといっても、最低限そのよう現場サイドのノウハウや勘を持ち合わせていなければ、マンション管理士は務まりません。
先々、マンション管理組合から認めてもらうためには、マンション管理士の「名刺」で勝負するのではなく、自分はどんな付加価値を持つマンション管理士であるかを認めてもらう必要があるでしょう。

ここまで、「独立開業」を前提にお話ししてきました。全国チェーンのコーヒー店、そのフランチャイズオーナーになる人も、店舗経営の実際を学ぶために、数か月間は厨房に入って働く必要があります。私は、独立開業を目指すマンション管理士にも、そのような準備段階が必要だと思っています。
特に資格を取得した後であれば、その資格をアピールして就職を決め、数年間は修行の時期と割り切って励む努力も大事かと思います。